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{{tag> essay}} ====== 謙虚さ ====== たいていの物語は、主人公や周囲の成長を描いている。 難しい決断をし、新しい仲間と知り合い、困難を乗り越えていく。 『フォレスト・ガンプ/一期一会』は、フォレスト・ガンプの生涯を通してアメリカの歴史的イベントを見ていく映画である。別に一期一会ではない。<del>タイトル詐欺</del>。 映画としてはあまり面白くはないが、生き方として意義がある部分を感じた。 ===== それ自体に集中するということ ===== 夢オチなんじゃないかってくらい、うまくいくストーリー。最初のバスの席を譲ってもらえないシーンからは、ああ陰湿な障害者差別を描いた映画が始まるんだな、と思ったが、そうじゃなかった。フォレスト・ガンプは実直さから人から信頼を得て、とんとん拍子に話が進む。思うほどストーリー的な谷は深くない。うまくいきすぎな感じ。上げて落とす感じでもない。 ストーリーの良し悪しはおいておこう。 この映画は世の中の偉人に共通した特徴の一部分を描いているように思える。 名声やほかの人の意見など全く無頓着で、自分のやりたいことをやりつづけるという特徴だ。 熱中の**結果として**、いつの間にかスゴいことになっていて、自分は表彰台に上がってから気づく。 世間でのいわゆる成功者像とは大きく違う。 ここでいう成功者像は…いかに稼ぐか、稼いでいるか、ということを臆面もなく言うヒト。そういう人が成功していくように、テレビやネットを見てるなかでは感じる。 身近に何かで成功した人がいれば、必ずしもそうでないということは理解できると思うが、彼らは声が大きいのでよく目立つ。 話でしか聞いたことがない庶民である私は、成功者とはそういうものだとなんとなく思っていた。誰よりも野心的で、隠そうともしない人。 富の目的のもとでは、逆算し、計画して何かをやることを考える人が進んでいて、成功するとされる。明確な目的を決めて、そのために期間ごとに分割して、達成していく。本屋のビジネス書のコーナーを見ても、そういう成功者像があることがよくわかる。 実際のところ、本当にそうなんだろうか。そして一番重要なことだが、それで幸福になれるんだろうか。 少なくとも歴史上に名を残すような偉人を見る限り、現代の、いわゆるビジネス書がいうような成功者像は当てはまらない。エゴの塊ではない。逆に、道徳に満ちた人でもない。共通した特徴なんてない。それぞれだ。 レオナルド・ダ・ヴィンチやアインシュタインやリーナス・トーヴァルズはビジネス書をたぶん読んでいない。伝記や自伝を見る限り、ビジネス書的なイメージとはかけ離れている。何か共通した習慣もない。明確な計画があったわけでもなく行き当たりばったりだ。完全に道徳的だったとも思わない。 興味のあることにメチャクチャ取り組んだ結果として業績を残して、有名になった。 また、ビジネス書的な方法論では幸福になることも難しいように思われる。 幸福感を感じるのは目標を達成した瞬間だけだ。すぐに次の目標が現れて、タイムリミットが迫る。 結果ばかりに注目して、プロセスや自分のモチベーションにはあまり注目していない。 徐々に楽しんでやっていたことは苦痛になってくる。「努力」とはまさにこうして我慢するニュアンスを含んだ言葉に思える。 モチベーションを科学的に起こす方法が発展し、解明されつつある。嫌なことでもやり続けることは、そう難しくはない。しかし本当の目的や、やりたいことをぼやけさせる。 何かを成し遂げる人の特徴は、たぶん大してないが、一応あるにはある。好きなことを追求したこと。それは歴史を通してあまり変わることはないのだが、世間が思うイメージは変化するようだ。現代は計画、ホラ吹き、強欲とかが成功者像のトレンドだといえる。かつては道徳であった時期もある。これからも変わっていくんだろう。 変わらない特徴だけを見たい。『フォレスト・ガンプ』を見てみよう。 フォレスト・ガンプのような態度で、それ自体が幸福であることをやるのはいい考えに思える。 そりゃあ物語みたいにうまくいくことは稀だが、それ自体が楽しいなら別にどうなったっていいんでないの。 成功は結果としてついてくるオマケのようなもので、運がよかったら成功もついてくる、くらいの心構えができれば最高だ。そもそもそういうものを見つたり、興味を耕すのが一番難しいかもしれない。
article/forest_gump.txt
· 最終更新: 2020/06/10 14:43 (外部編集)
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